調停での財産分与の進め方
離婚調停月に1回程度、家庭裁判所で2名の調停委員を間に挟んで行います。
私が離婚調停をしていたのは丁度コロナが始まったころで、延期も含めて2か月に1回のペースで行いました。
調停は2時間。30分調停委員と話をして、30分別の部屋で待機。その間に相手が調停委員と話をしています。相手の話を受けて再び部屋に呼び出され30分話をして、また30分待機。この2セットの中で争点を確認していきます。
その場で一から話を始めても終わりません。書類は事前に提出したり、次回までに今回争点になったことを宿題として回答を出したり。場合によっては調停外で双方やりとりをしながら調停日に争点を解決していきます。
婚姻関係財産一覧表
夫婦の共有財産を半分ずつにするというのが基本です。
双方が考えている共有財産が全てわかっていれば良いのですが、双方が考えている共有財産が同じ認識とは限りません。
その物差しとして使うのが財産一覧表です。
実際に使ったもの(最終確定の前段階のもの)で説明します。
まず、元妻(申立人)が左側に主張を記載します。
上部が申立人の主張する申立人自身の資産。下部に私(相手方)が持っていると主張する私(相手方)の資産を記載します。
同じように私(相手方)も右側に自分の主張を記載します。
上部が私(相手方)の主張する申立人が持っていると主張する資産。下部に私(相手方)自身の資産を記載します。
双方が記載したうちの相違点について、調停の場で双方が主張し最終の共有財産を確定します。
元妻(申立人)の資産
一覧表の上部が、元妻(申立人)・私(相手方)それぞれが主張する元妻(申立人)の資産です。
一覧表を見ると申立人・相手方共に同じ預貯金になっています。
子供の進学費用があるはずと開示を求めましたが、無い。
別居にあたり保険を解約してその費用に充てているはずなのですが、それも無いとのこと
開示はありませんでした。本当にあるのか無いのかはわかりませんが、無いとの主張でした。
私はあったとしても子供の為に使ってもらえれば良いと思って、2回目の時には開示は求めませんでした。
結果として元妻(申立人)の主張通りとなりました。
私(相手方)の資産
以前は私の給与含めて家計は全て元妻が管理していたので、基本的に私のお金はありません。
私名義のお金は、私の小遣いを減らした分の子供の進学費用をコツコツ積み上げたもの。
それと、直近で私が家計管理して確保した子供の進学費用のみです。
当然、元妻にも全て話してあったお金なので私の方は全部開示しています。
預貯金と株は、給与口座を除き子供の進学費用分になっています。
保険は生命保険。預貯金・株・保険は、双方の主張が同額になっているので争点はありません。
元妻は退職金も財産分与しろと言ってきたのですが、10年以上も先の出るかもわからない退職金を入れる必要はないときっぱり主張しました。(私も言われる可能性を考えて弁護士相談していたので、すんなりといきました)
問題は不動産です。
不動産の相違
争点になったのが住んでいたマンションです。
元妻(弁護士)はマンションを売ってそのお金を折半するというようなことを主張していました。
私はそれなりに自宅マンションにこだわりがあったので、絶対に妥協しない姿勢で臨みました。
1)1回目 元妻(申立人)が査定書を基に1,950万円で主張する。
一番最初の一覧表にはマンションの査定書を一つつけて1950万円と主張してきました。やり方はいろいろあるようですが、時価として査定するのは一般的らしいです。
2)1回目 私(相手方)が査定書を基に1,050万円で主張する。
私は査定書を5つつけて、その平均の1,050万円で主張しました。
まずは子供の進学費用が切羽詰まっていたので、買取で実際に見てもらい、いろいろな会社で出してもらいました。時価で出すのには実際に見てもらった方が良いです。
またこれとは別にローンの残債676万円を負債として主張しています。
この時点で主張の差額が900万円と大きな差がありました。
3)2回目 元妻(申立人)が710万円で評価を出しなおす。
マンションの評価をお互いの間でとってきました。マンション自体の評価は1,400万円。
そこからローンの残債を控除して実質710万円としてきました。お互いが譲歩して妥当な金額にして合意したかったのだと思います。
4)2回目 私(相手方)が837万円で評価を出しなおす。
これにはローンの残債は含めていません。実質161万円です。
画像の一覧表は丁度この時のものです。
※なぜ実質161万円にしたのかのロジックです。
■マンションの評価自体は1,450万円とした。
元妻の1,450万円は机上の査定にすぎず、1,050万円は実際に見た上での査定なので事実。そこはぶれる理由はない。
考えられることとして、リフォームをした前提であれば400万円は上乗せできる(これも見積取得)。それならば理解できる。元妻がリフォーム費用を出す前提で1,450万とするのは同意できるとしました。
これには裏事情があり、子供の進学費用も確保せず困っているときに、リフォームをしたいと言い出されまして。そんなお金があるなら子供の費用が先と言い、他の家はみんなリフォームしていると言われ、言い合いになった経緯がありました。それなら、リフォーム負担することが大前提ということで1,450万もやむなしとしました。
■特有財産613万円を主張した。
マンション購入は結婚前。名義は私。頭金を親が出していることや父親の遺産分割協議書も持ち出して特有財産を計算。その分は共有財産の対象にならないとして控除することを主張しました。
■ローン残債は676万円を主張した。
これは元妻(申立人)もわかっていることなので特にはありません。
結局1,450万円で査定することには譲歩するが、特有財産613万円、ローン残債676万円を控除した、実質161万円を主張することにしました。同時に証拠説明書もつけて一覧表を提出しました。
この時点で主張の差額が549万でまだまだ開きがありました。
5)3回目 元妻(申立人)は2回目の710万円を譲らず。
元妻の弁護士もマンション分をもらえると思っていたのかもしれません。反論する書面を提出してきました。
反論の書面は残念なことにあまり整理されていませんでした。特有財産の計算式が書いてあり、特有財産の減額を主張してきました。正直そんな難癖みたいに言われてもと思ってしまいました。
一方私は証拠説明書で全部説明できたので調停委員の方も理解していたように思います。
6)3回目 私(相手方)は0円で主張する。
調停委員の方にはマンションについては一切譲歩しないことを先ず伝えました。
家計を改善したくて努力していたのに蔑ろにされて離婚を申し立てられたこと。その点では財産分与については妥協はできない。特にマンションは譲歩しないことをあらためて話しました。
■0円の主張
前回、元妻の弁護士が特有財産の計算式を難しそうに説明。私の主張する特有財産を減額しようとして考えていたのかもしれません。だだし、よくよくそのロジックを確認していくと弁護士が計算を間違えているのがわかりました。
その計算式で計算すると実はマンションの評価はマイナスになってしまうんです。結論として、元妻の主張通りであればマイナスになる。私が請求することになるが請求はせず0円で構わない。それに加えローンの残債もあることを主張しました。
7)4回目 元妻(申立人)がマンションの放棄を申し出る。
今回の調停から元妻の代理人弁護士が替わり、マンションについては財産分与に入れないという提案がありました。そこで私も譲歩することにしました。
最後に
結果的に私の主張が通り、財産分与については保険の解約して渡すだけで済みました。財産分与だけの話であれば、結果は良かったといえば良かったです。先方の弁護士の主張通り進んでいたら、マンションも売って800万円位払うことになっていました。
結果的に主張が通った理由を考えてみました。
・私に対しての認識が甘かった
推測です。悪いのは私。資産もあるからお金を取れる。お決まりの対応で良いと考えていたのかもしれません。全て法的な対応をすれば主張に応じると思っていたのか、そこはわかりません。
・特有財産をうまく説明できた
私自身も調べるまでわからなかったのですが、特有財産については弁護士見解も聞きながら進めました。不動産自体も経緯を一から調べるのにかなり時間を掛けることになりました。
実際に今回の特有財産は複雑なパターンだったので証拠書類を10個つけて証拠説明書を作成しました。もちろん、弁護士相談でロジックは事前確認してもらいました。トラブルになる前にきちんと整理しておければ良いと思いました。
・査定の見積は実際に見てもらう。
調停委員へは実際に見てもらった上での査定と話したのですが、納得感があったように感じました。自宅が簡単に売れる立地やタイミングなら良いですけど、切羽詰まっているときは即現金で買い取ってもらうのを前提でも良いかと思います。
最後に
調停ということで滅多にできるものではないし、調停の場では少なからず緊張します。そういう意味では場慣れすることで落ち着いてできると思いますし(普段の仕事が役に立つ)、代理人弁護士を立てなくても法律相談で十分助けになります。
納得いかない調停を申し立てられても感情的にならずに落ち着いて判断する。
適宜相談することで、よりよい対応ができると感じます。
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